~おかもん放浪中~

縄の魔術師、おかもん!なわとび(単なわとび・ダブルダッチ・2in1など)の紹介の他、五ヶ国語制覇への道も!

IJRU(国際ジャンプロープ連合)設立とその影響についての考察

2018年2月25日(日)、衝撃的なニュースがなわとび界を駆け巡りました。

長年対立していたなわとび界の2大世界組織、FISAC-IRSF(国際ロープスキッピング連盟)とWJRF(ワールドジャンプロープ協会)が2020年を目途に合併するというのです。

今回は、この合併が実際にどのようなものなのか、また、日本や世界にどのような影響を与えるのか、考えました。公表された文章を基に私が勝手に考察した記事になりますので、予めご了承下さい。

 

発表の正式文章はこちら。(FISAC-IRSFのPDF文章。WJRのHPにも同様のものがあります)

 

今までの歴史

これは私も又聞きでしかありませんが、「選手は国・地域の代表であって、世界大会に選手を送ることができるのは1つの国(地域、以下「国」は地域の意も含める)につき1団体のみである」、というFISACの運営方針にWJRFの創立メンバーが反発したということです。

この情報の信ぴょう性を高めているのは、WJRFの参加条件にあります。基本的には「参加したい人全員が参加できる」ことがWJR世界大会の大きな考えでした。

アメリカにはなわとびをしている団体が山ほどあり(多分世界一)、ここを勝ち抜かなければ世界大会に行けないというハードルの高さ、そして、それよりもレベルの低い人たちが他の国から出ている、ということも理由の一部だったのだろうと想像します。

実際に、WJR2017年大会は30か国800人の参加があったということですが、肌感覚では半分くらいはアメリカ各地から集まった人たちでした。

 

しかしながら、近年WJRFは「参加したい人全員が参加できる」という元々の趣旨から外れた行動をとるようになります。WJRFとMOU(Memorandam of Understanding:法的拘束力のない覚書)を交わした団体に、その国からの独占的な選手派遣権利を授けるようになったのです。

HP上で公開されていないためMOUを交わした団体の正確な数は分かりませんが、香港とインドは有名な例です。これらの国は、その団体からしかWJR世界大会に参加できないのです。

2015年にはこんなことがありました。フランスのパリで行われたWJR世界大会に、FISAC系の団体に所属している世界トップレベルのある香港チームがきました。しかし、MOUを交わした団体からの推薦がないということで、パリにいるにも関わらず大会に参加できないということになったのです。このチーム、実は出自を偽って上海から来たことにしていたようで、申し込みの段階で大会側が気づけなかったようです。MOUを交わした団体から派遣された香港人が、「あいつらに参加の権利はない」と主張したのではないかと想像します。

「FISACの下部組織」と「WJRとMOUを交わした団体」の仲が良くなかったことが問題の一因です。いずれにせよ、WJRが徐々に「誰でも参加できる」大会でなくなってきていたことは事実です。

 

合併の目的

なぜ、今まで対立していた2つの団体の統合が可能になったのでしょうか。

Our goal is to merge both organizations (FISAC-IRSF and WJRF) to create a new International Federation that will be recognized by the Global Association of International Sports Federations (GAISF-formerly SportAccord).  IJRU letter

要点は、下記の通り。

  • 目的は国際スポーツ連盟(GAISF-前SportAccord)に認知されること
  • この認知は、私たちのスポーツをオリンピックにするための第一歩

つまり、Jump Rope/Rope Skippingをオリンピックに向けて前進させるために統合するということです。オリンピック種目になるには色々な段階を経ないといけないようで、まずは国際スポーツ連盟(GAISF)に登録すること(認知されること?)が必要なようです。

QAにも書かれていますが、GAISFはスポーツごとに1つの国際連盟しか認めないようで、統合の必要性があったと言えます。

 

タイムスケジュール

文章に書かれているスケジュールをまとめると、以下の通りです。

  • 2018年3月 更に詳しい説明
  • 2018年夏 最後のFISAC世界大会 (WJR世界大会も?)
  • 2019年夏 最後のWJR世界大会→IJRUの年次総会(AGM)で2団体解散、IJRU設立
  • 2020年夏 IJRU世界大会(以後、2年毎に世界大会)

今までFISACは2年に1度(偶数年)に世界大会、WJRは毎年世界大会を行っていましたが、他のスポーツと合わせて2年に1度の開催にしようとしています。世界大会が開催されない年は、地域での大会が予定されています(アジア大会、ヨーロッパ大会、など)。

 

日本への影響

さて、それでは日本への影響を考えます。まず、文章内にあるQAをみていきます。

Q. How will the athletes be selected for 2020 World Championships?

A. IJRU will engage with National Governing Bodies to select their athletes to represent their respective countries. 2020 athletes will be required to register through their respective National Governing Body. IJRU letter

Question: 2020年の世界大会にはどの選手が選ばれるのでしょうか

Answer: 各国の代表組織から選手が選出されます。2020年の出場選手は、それぞれの国内代表組織を通じて登録する必要があります

つまり、国内にある1つの団体が、IJRU世界大会への派遣を行うことができるのです。

現状、日本国内での状況は下記のとおりです。

  • FISAC世界大会にはFISAC下部組織のJRSF(日本ロープスキッピング連盟)から派遣
  • WJR世界大会にはJDDA(日本ダブルダッチ協会)関係のチームと、それとは別に独自に申し込んだ人たちが出場

WJRとMOUを交わした団体が日本にはないので、派遣という言葉を使っていません。これを見ると明らかなように、IJRUの下部組織になりうる日本の団体は現状JRSFしかありませんので、IJRU世界大会に派遣することのできる団体はJRSFになるでしょう。

JDDAは、独自に予選を行ってWJR世界大会に多くの選手を送っていますが、このままでは2020年以上にIJRU世界大会に出場することはできなくなります。

 

実現にはある程度高いハードルがありますが、JRSFとJDDAは色々な面で協力し合っているため、JDDA側の強力な要請があればIJRU世界大会に出場するための予選を共同で開催するという案はあるのかなと思っています。

現状、FISAC世界大会は1つの国ごとに派遣できるチーム数を制限しています。他のスポーツと合わせるということなので、IJRUもこれに近い形になるでしょう。

JRSFの派遣基準は、個人戦・団体戦ともに総合部門で選出→種目別で選出という方式です。団体戦はSingle Rope(単なわとび)とDouble Dutch(ダブルダッチ)のどちらの種目もあるため、ダブルダッチしかできない人たちが総合部門で選ばれる可能性は非常に低いです。JDDA関係のチームは、短期的にはダブルダッチの種目別で選ばれる道を探していくことになるでしょう。

 

長期的な視点に立てば、IJRU予選をJRSFとJDDAが協力することで日本トップの人たちが集結するため、日本でもようやくSingle Rope か Double Dutchか、ではなく、Rope Skipping/Jump Rope、つまり、なわとびとしての広がりが生まれることが期待されます。

 

今後

ルールの統一や、重複して団体が存在している国に対してどうなるのか、まだまだ状況は流動的です。大きなニュースはブログで報告していこうと思っています。

まずは今月公開される予定の文章を待ちましょう。