審査員講評について DDDE2016(Double Dutch Delight East 2016)から考える
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Event [楽しもう!なわとび ~Let's Enjoy Skipping!~]
9月5日にダブルダッチの大会、DDDE2016(Double Dutch Delight East 2016)がありました。
その個人的採点結果はこちら!
今回は、審査員講評についての記事になります。
*注意*審査員個人が良い悪い、と言いたいわけではなく、審査員のコメントがどうだったかを見ています。罪を憎んで人を憎まず、という言葉がありますが、そんな感じです(罪ではありませんが)。
説明責任
審査員は、単に審査をするだけではなく、自分が行った審査に対して説明する責任があります。
Double Dutch Delightでは、この、ジャッジの説明責任(Accountability)をよりオープンにしようとしています。私の記録によりますと、2013年より、各ジャッジの講評がHPに掲載されています(今年で4年目)。
この講評の掲載は評判が結構宜しいです。理由としては、ポジティブな評価を中心に、個別のチーム名を出しているのが1点目。
2点目としては、当日会場にいけなかった人も大会の雰囲気を味わえる、ということが挙げられます。
大会の当日には、結果発表の後に、ジャッジの口頭での講評があります。これはある程度どの大会でも見られるものですが、DDDの場合、後に詳しくHPに講評を載せるということで、何をどの分量話すのか、非常に難しい判断を迫られます。
今回の記事は、上記のことを念頭に置き、DDDE2016の講評を参考に、私の理想とする審査員講評について考えていきます。
DDDE2016審査員講評概要
以下敬称略
ジャッジ | 項目 | 時間 | 内容 |
---|---|---|---|
HARUKA | 表現力 | 3:41 | 1.舞台に一歩足を踏み入れた瞬間から、お客さんから見えなくなる時までがパフォーマンス この意識が、演技中に縄の外にいる時の所作にも現れている 2.自分のチームの欠点は、自分で気付いて欲しい ビデオを見て、自分のイメージとのギャップを埋めて欲しい |
KO-YA | 技術力 | 1:31 | ジャンパースキルとターナースキルが相乗効果を生んでいる時にダブルダッチの盛り上がりがある |
KANEKO | 構成力 | 1:41 | 1.構成はどこもどっこいどっこい。YouKnowWhoとAile-D'oreは演出力が秀でていた 2.守破離、の守、つまり、基礎の部分が弱いチームが多かった |
タク | 完成度 | 2:11 | 1.一般部門、1位のGrayと同様にレベルの高いチームがいた 2.オープン部門、出場するのに達していないレベルのチームがあった。人が跳んでいないときの縄の綺麗さを意識して欲しい |
SHIGE | オリジナリティー | 1:38 | 1.高得点のチームは自分たちのやりたいこと、観客を引き込む工夫が随所に見られた 2.Japan大会に向けて、今日の感覚を忘れないようにして欲しい |
計 | 10:42 |
内容は、私が適当に要約したので、大体のイメージと考えて下さい。細かいニュアンスを議論したいわけではありません。
さて、皆さんこれを見てどう思ったでしょう。
まずは時間が気になりますね。これは後で議論しましょう。内容について先に見ます。
自分の担当と抽象度
HARUKAは、自分が担当した「表現力」について、ある程度具体的に話しています。
KO-YA、自分が担当した「技術力」に引っかかるようなことを、抽象的に話しています。
KANEKOは、自分が担当した「構成力」について少し触れた後、自分の担当とは関係なく、パフォーマンス全体としての話を抽象的にしています。
タクは、一般部門に触れた後、自分が担当した「完成度」に引っかかるようなことを、ある程度具体的に話しています。
SHIGEは、自分が担当した「オリジナリティー」について、抽象的に話した後、自分の担当とは関係なく、パフォーマンス全体としての話を抽象的にしています。
どうでしょう。
自分が担当した項目について触れるかどうか、触れるとしたらどのくらいの時間をどの程度の抽象度を持って触れるのか。ジャッジがまず考えなければならないところはこれです。
項目ごとにジャッジがいるわけですから、基本的には担当した項目について述べれば良いはずです。
ただ、DDDでは、詳細な講評を後にWEBで公開するというシステムが存在しているため、WEBで公開することと同じことを言うのか、ジャッジは考えるわけです。
この点について、私の頭の中でも何が良いのか答えが出ていない状態ですので、この段階で一旦保留にしておきます。ジャッジの皆さん、是非皆さんの解答を大会の講評で教えてください。
時間について
それぞれがマイクを持っていた時間を再掲すると、下記の通りです。
HARUKA 3:41
KO-YA 1:31
KANEKO 1:41
タク 2:11
SHIGE 1:38
今回は、1:30-2:00くらいの人が多いことが分かりますが、これらのコメントは長いと感じませんでした。HARUKAは、アクシデントがあったとは言え、少し長いかなと思ったので、審査員コメントは、1人あたり1:30-2:00を目安に話を構成すると良いと思います。
話が長い時はまとまっていないことが多いので、結局何も伝わっていないんですよね。
話す項目数
2つでは物足りない、4つでは覚えきれない、3つが丁度良いのだ、というのが3の法則です。(cf.スティーブ・ジョブス氏から学ぶ、数字の「3」の法則 | マイナビニュース)
ですので、3項目を目安に話をするのが良いと言われることがあります。実感としても、重要な点は4つを超えないようにした方が言うほう・聞くほう・双方分かりやすいです。
ただし、今回の例では、ジャッジが5人いるわけです。すでに4をオーバー。
これで1人が3つも4つも言っていたら、全員が何を言っていたのか覚えていることは非常に困難です。
つまり、各審査員はそれぞれ1つ、多くても2つの事しか言わない方が良いのです。
DDDE2016では、それぞれの審査員が1つ,2つの項目を話しており、項目数の観点からは及第点を与えられます。
それでも全員で9個ありますからね、結構な分量です。
ちなみに、全員が何を言っていたのかを覚えている必要があるのか(講評中に心に残ったいくつかだけ覚えていれば良いのではないか)、というのは別に議論されるべき点です。
個人的には、今回の9つでも多いので、これ以上話して欲しくないです。
文章数
日本語は主語を省いて良いという性質があるが故に、やろうと思えば文章をいくらでも繋げられてしまいます。
しかし、文章が長くなると、前と後ろの繋がりが薄れ、主語述語の関係が破綻し、結局何を言いたいのかが分かりにくくなります。
1つ1つの文を短く、かつ、1つの文で2つ以上の項目を挟まないことがプレゼンテーションとして重要です。
例:
私は、今日この会場に来て思ったのですが、こんな広いステージでできることが選手にとってとても素晴らしいと思いますし、なにより、音響がまるでコンサート会場にいるかのように響いていて、今回出場する選手は本当に恵まれているなと思います
==> 私は、今日この会場に来て思ったんです。こんな広いステージでできることが選手にとってとても素晴らしいことだなと。なにより、音響がまるでコンサート会場にいるようです。今回出場する選手は本当に恵まれているなと思います
適当な文章ですが、上と下で文章の読みやすさは一目瞭然でしょう。上のような文章を書く人はいないと思います。では、話すとなれば?
人前で話すことに慣れていない人は、往々にして上の文章になってしまいがちです。
人の話を区切るのは非常に難しかったのですが、DDDE2016の審査員コメントを文章数にしてみました。秒/文のところが今回話題にしたいところです。
秒 | 文 | 秒/文 | |
---|---|---|---|
HARUKA | 221 | 11 | 20 |
KO-YA | 91 | 3 | 30 |
KANEKO | 101 | 6 | 16 |
タク | 131 | 10 | 13 |
SHIGE | 98 | 7 | 14 |
この文の数というのは、一回やってもらうと分かりますが、数えるのが非常に難しいです。ですので、細かい数字の違い、に意味はないです。
実際のコメントをしているところも考慮すると(タクは溜めが多い、とか)、こんな感じです。
(単位文章あたりの時間) KO-YA > HARUKA > KANEKO ≧ SHIGE ≧ タク
この数字に非常に意味があるわけではありませんが、10秒/文くらいを目指してコメントしてみると伝わりやすいと思います。
その他
全体を通して言っている意味が分かりやすかったのは、KANEKOとタクです。
KANEKO
KANEKOは、プレゼンテーションで重要な方法を使っています。
- 全体の概要を言う(構成はどっこいどっこい)
- 具体論に入る(名指しで言うと、、、)
- その理由を述べる
守破離について、
- 全体の概要を言う(守破離という言葉を覚えて欲しい)
- 具体的に説明する(守、とは、、、)
- 理由を述べる(守、の基礎部分が弱いチームが多い)
大きな枠組みとして、下記を意識すると話が非常に分かりやすくなります。
- まず、言いたいことを簡潔に述べる
- 具体的に説明する
- まとめで、全体を簡潔に述べる(1と同じでOK)
ジャッジに限らず、人前で話すのが苦手な人は、是非これを意識してみてください。
タク
タクは、主語と述語の関係が明快でした。
声を発しながら、文章としておかしくないかを考えながら話していることも、文の破綻や矛盾した内容になっていない理由の大きな1つだと思います。
数多くの大会でジャッジ経験があり、経験値が他を圧倒していたと考えます。ユーモアのセンスも光っていました(Next Heroes Eastのコメントも良かった)。
(ユーモアうんぬんは、今回の記事の範囲を超えているので割愛します、というか今のところ書けない。)
まとめ
- コメントは1:30-2:00くらいにまとめる
- 審査員が言う内容は、多くて2つにする
- 10秒/文を目指して文章を区切りながら話す
- 言いたいことを簡潔に=>具体的に説明=>まとめ、を意識
- 後にWEBで講評を公開することを前提に、(1)自分の審査項目(2)その他、の何をどれくらい話すか考える
P.S. パフォーマンスは練習するのに、(私も含めて)講評の練習ってジャッジもあんまりしてないんじゃないかな。