パフォーマンスの理想的な採点方法 -競技とパフォーマンスの違いから考察する-
前回(大会の採点について考える -Double Dutch Delight 2014-)、前々回(今年の敗者復活について -Double Dutch Delight 2014-)からの流れです。
なわとび界で昔からの話題ですが、「競技とパフォーマンスの違い」を考えて、ここからどういう採点方法が良いのか考えます。
1. 競技とパフォーマンスの違いとは
まず、一般的に「競技」とは
一定の規則に従って、技術や運動能力の優劣を互いにきそうこと。「陸上―」「珠算―」
だそうですが、ここでは
- 「競技(大会)」:技を競う(大会)
- 「パフォーマンス(大会)」:魅せ方を競う(大会)
ということにします。(上の定義で捉えると、大会というのは一定の規則に従っているのであって、全てが「競技」になってしまいますので。)
さて(、この2つの意味を定義するところが重要な気もしますが)、今回ははここからスタートします。
この2つ、大会になった場合には、対極にある考え方なんです。
「競技」は、誤解を恐れずに完結に言うと、どれだけ正確に難しい技をできるのか、を競うものです。
つまり、厳密な規則(ルール)に従って、100人の審判がいたら100人ともが同じジャッジ(裁定)を下す必要があり、そのため審判資格があることが多いのです。
それに対して、「パフォーマンス(大会)」というのはそもそもの定義がしにくいものですが、敢えて言うならば、どれだけ多くの人がどれだけ熱烈に「イイね!」と思ってくれるのか、を競うものではないでしょうか。
ここで重要なことは、「イイね!」はこれ以上ないくらい主観の塊で、人によって全く意見が違うことが起こり得ます。つまり、絶対的な審査の基準がないのです。
これはどういうことかというと、審判によって審査結果が異なることを意味します。
審判によって審査結果が異なるかどうか、ここが「競技」と「パフォーマンス」の大きな違いです。
2. なわとび界の「競技」大会と「パフォーマンス」大会
なわとび界においては、以下のような分類になります。
[競技] FISAC World Championship、World Jump Rope、Japan Open、ADDL World Invitationalなど
[パフォーマンス] Double Dutch Contest, Double Dutch Delight, 楽しもう!なわとび など
3. パフォーマンスの採点
競技と比較すると明確ですが、パフォーマンスには答えがありません。よって、まず「パフォーマンスを採点すること自体、そもそもおかしいこと」だと認識する事がスタート地点です。
ただ、やっぱり大会があると盛り上がるし面白いし何とかして順位を付けたい、ということで大会が開かれる訳ですが、上に書いたように、競技のように順位を一意に(一通りに)決めることは不可能です。
不可能であることは承知をしているけれど、大会なので採点をして順位を出すわけですね。つまり、大会の結果が色々な要素によって左右されることを本質的に認めているのです。
仮にAとBという2チームがいたとして、AがBより得点が1点上だったとしましょう。この時、AとBの演技だけはそっくりそのまま同じで、A・Bの順番、他のチームの順番やミスが変化したとしたとき、さっきと同じ得点結果にならない可能性って結構高いと思いませんか(BがAより高得点とか、もっとAとBの得点差が開いているとか)。
これが競技の場合には、同じ点数になります。審査基準が明確なので、審判の判断能力が十分ならいつでもどこでも何度やっても同じ点数です。
しかしパフォーマンスの場合だと、前のチームが圧倒的な演技をした、とか、同じ曲を使用しているチームがいっぱいあった、とか、終盤飽きてきたところで予想以上に盛り上がった、とか、そういったことで点数って変わってきます。
パフォーマンスの大会には「不確定性」を織り込んでおくことが必要です。
不確定性の原因例:審査員、演技順、ステージ、観客の盛り上がり、など
4. 項目別採点の是非
さて、結論の前にもう一つ。Double Dutch DelightやDouble Dutch Contest Finalで採用されている項目別採点についてです。
例えば、Double Dutch Delightには技術、表現、構成、オリジナル、完成度の5つの項目があります。技術について見てみると、
ダブルダッチのロープのなかで行われる各技を評価し審査する。特に「ジャンパー・ターナーの安定感」「ロープがたるまない綺麗さ」「ターニングのリズム感」を中心に、各技(ロープトリック、ジャンプトリック、アクロバットなど)の習得レベルを審査する。 by Double Dutch Delight 2014
です。
この問題点の1つは、パフォーマンスの競技化です。運営側は、パフォーマンスなのに判断基準を「ある程度」明確にしようとしていると思いますが、上で書いた通り、明確な基準なんて作れるわけがありません、パフォーマンスなんだもの。
この曖昧な明確化によって、参加者からは「なんでこんな分かりにくい基準なのか!もっと分かりやすくしてよ!」とクレームがつきます。子供の教育などと一緒ですね、与えられてしまったので答えがあると思ってしまうのです。
これを「パフォーマンスの競技化」と呼んでいます。
自分たちで色々と考えて試行錯誤するのが楽しいのに、前年度の優勝演技などの「与えられた答え」を妄信してしまうのです。
項目別採点、もう1つの問題点は、その項目で採点しきれない点が存在することです。具体的に例を挙げると、Double Dutch Contest Vol.8の超三流というチームの演技は、盛り上がりを考えると断トツで1位だったのですが、実際の順位としては確か8位くらいだったと思います。
5. 採点制度の提案
ようやく提案です。不確定性を前提とした上で、採点から漏れてしまう演技を無くすにはどうすれば良いのか。
今のところ一番良いと思われるのが、
「5人の審査員が、自分のなわとびパフォーマンス基準に従って、それぞれ20点満点で採点する」
*注意:5人とか20点は例えです。
です。意外でしょうか、シンプルですね。
この時、審査員の選び方が重要だと思うのですが、例えば、
1人目 ターナーの技術を高く評価する「傾向にある」人
2人目 ジャンパーの技術を高く評価する「傾向にある」人
3人目 1つの作品としての演技を高く評価する「傾向にある」人
4人目 演技から伝わってくるものを高く評価する「傾向にある」人
5人目 今まで見たことのない技や演技内容など、オリジナルを高く評価する「傾向にある」人
とします。それらの人が、それぞれ総合的に評価するのです。
例えば、1人目はターナーの技術を高く評価する「傾向にある」人ですが、ターナーの技術だけを見るわけじゃありません。そこ目線で演技全体を見るわけです。
つまり、色々な観点・視点から総合的に見ていく為の審査員を集めて、それぞれが総合的に評価するというのが一番良いと思うのです。
6. 最後に
如何でしたでしょうか。今回は採点システムについてでしたが、色々な話題を議題に上げ、毎年毎年レベルが上がった議論ができるようになれば良いなと思います。
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